AIの可視性ギャップ:ウェブサイト訪問の前に何が起きているのか
ある人がChatGPTにウェブ解析プラットフォームの比較を依頼します。回答を読んでチャットを閉じ、翌日、ベンダーの1社を名前で検索してサイトに戻ってきます。いくつかのページを読んだ後、デモを予約します。
ウェブ解析では、オーガニック検索からの訪問、閲覧されたページ、そしてコンバージョンを把握できます。しかし、訪問者がサイトにたどり着く前にAIアシスタントが意思決定に影響を与えていたかどうかはわかりません。この欠けた文脈が「AIの可視性ギャップ」を生みます。つまり、AIの影響の一部は解析データにまったく現れないのです。
ここでいう「可視性」とは、計測上の可視性のことであり、AIが生成する回答にブランドがどれだけ登場するかという意味ではありません。
米国、ドイツ、フランスのウェブ解析の専門家300人を対象にした調査に基づくMatomoのFuture of Web Analyticsレポートでは、92.7%がChatGPTやPerplexityなどのAIプラットフォームからのトラフィックは自社のビジネスにとって重要だと回答しています。また、85.7%がAI経由のトラフィックは解析データに強い、または中程度の影響を与えていると回答しています。
可視性にはばらつきがあります。AIトラフィックを明確に把握できていると回答したのは53.7%で、40.7%は部分的にしか把握できていないと回答しています。AIはチームの計測への取り組み方も変えつつあります。42.7%がAIによってパフォーマンスの計測方法を見直さざるを得なくなっていると回答し、41%がAIによってデータの不確実性が高まっていると回答しています。
AIの可視性ギャップが解析にとって意味すること
AI検索トラッキングは、AIアシスタントからの識別可能な訪問を対象とします。AIトラフィックのアトリビューションは、記録されたAIとの接点がコンバージョンにどのように貢献したかを分析するものです。
AIの可視性ギャップは、こうした根拠が途切れたところから始まります。ある人がChatGPTで製品を調べ、後からオーガニック検索やダイレクトで訪れた場合、解析ではその訪問とコンバージョンを計測できます。しかし、両者を結びつける別の計測可能なシグナルがない限り、それ以前のAIとのやり取りをその人に結びつけることはできません。
この違いは、チャネルのパフォーマンスをどう解釈すべきかに影響します。オーガニック検索からの訪問はあくまでオーガニック検索からの訪問であり、カスタマージャーニーの初期段階でAIが影響を与えた可能性があるというだけで、ダイレクトトラフィックをAIに分類し直すべきではありません。
他のデータソースから文脈を補うことはできます。CRMデータからは、リードが売上につながったかどうかがわかります。指名検索の傾向からは、需要の変化がわかります。顧客アンケートでは、人々がブランドを知ったきっかけをどう記憶しているかを把握できます。AI引用モニタリングツールでは、AIが生成する回答のどこにブランドが登場しているかがわかります。それぞれのソースは異なる根拠を提供しますが、実際には記録していないやり取りの証拠として扱うべきものはありません。
各データソースは実際に記録している内容のために使い、補助的なデータを、計測されていないAIとのやり取りの証拠として扱わないようにしましょう。
AI検索トラッキングが捉えるのは目に見える部分
AIアシスタントに表示された出典リンクがクリックされ、リファラー情報が取得できる場合、解析ではその訪問を識別できます。チームはAI経由の訪問を他の集客チャネルと比較し、ランディングページ、訪問時の行動、目標のコンバージョン、その他のサイト内での成果を分析できます。
AIの影響を受けたコンバージョンでも、別のチャネルに属する場合がある
トラフィックの流入元とAIの影響は、必ずしも同じではありません。よくある3つのジャーニーを考えてみましょう。
- ChatGPTでベンダーを比較し、後で1つのブランドを検索して、オーガニック検索経由でコンバージョンする。
- Perplexityでおすすめを見て、後でドメインを直接入力して戻り、ダイレクトの訪問中にコンバージョンする。
- AIアシスタントを通じて製品を知り、調査を続ける中で有料キャンペーンをクリックし、最終的にコンバージョンする。
いずれの場合も、表示される集客チャネルは、実際にウェブサイトに到達した訪問を表しています。根拠なしにオーガニック検索、ダイレクト、有料トラフィックをAIに分類し直すと、見せかけの精度が生まれ、チャネルレポートの信頼性が下がります。
同じ制約はアトリビューションモデルにも当てはまります。マルチタッチアトリビューションは、記録された接点に貢献度を配分できますが、一度も観測されていない接点を作り出すことはできません。
AIからの参照元が増えれば、計測可能な訪問の可視性は高まります。それでも、サイト外で起きたAIの影響は説明できません。そのため、チームは記録された根拠と、補助的な文脈や推測とを区別する必要があります。
データでわかること、わからないこと
このギャップに対処する実用的な方法は、各ジャーニーを層に分けて見ることです。まずウェブ解析が実際に記録した内容から始め、次に他の根拠を、直接的なアトリビューションとしては示さずに加えていきます。
| ジャーニー | ウェブ解析でわかること | わからないまま残ること | その他の文脈 |
|---|---|---|---|
| AIからの参照、その後コンバージョン | AIのリファラー、ランディングページ、サイト内での行動、コンバージョン。 | クリック前に行われた調査やAIとの接触。 | CRMデータで、コンバージョン後のパイプラインや売上を補える。 |
| AIで調査、その後指名検索を経てコンバージョン | オーガニックの訪問、サイト内での行動、コンバージョン。 | AIがオーガニック検索のきっかけになった、または影響を与えたかどうか。 | 自己申告による認知経路、検索需要、CRM、AI引用モニタリングで文脈を補える。 |
| AIの回答のみで、ウェブサイト訪問なし | そのやり取りに関するサイト内のシグナルはない。 | AIとのやり取り全体と、それが後の意思決定に影響したかどうか。 | AI引用モニタリングでは、ブランドやページがAIの回答に登場したことがわかり、ブランド検索の傾向からさらに文脈を補える。ただし、いずれも直接的なアトリビューションにはならない。 |
| 複数段階のエンタープライズ営業プロセスにおける、AIからの参照、リード獲得、成約 | AIからの参照と、サイト内でのリードのコンバージョン。 | リードがウェブサイトを離れた後のビジネス上の成果。 | CRMの商談データや売上データによって、計測可能な訪問とその後の価値が結びつく。 |
最後の列は、すでに手元にあるシグナルを解釈するのに役立ちます。すべてのジャーニーを最初から最後まで再構築することは、おそらくできないでしょう。それでも、システム間でデータを比較すれば、その文脈を計測された接点として扱うことなく、ジャーニーの各部分が同じ解釈を裏付けているかどうかを確認できます。自己申告による認知経路のデータも役立ちますが、人々が記憶していて、かつ回答しようと思った内容しか反映されないという制約があります。
AIのアトリビューションには複数のシステムからの文脈が必要
システムごとに、カスタマージャーニーの異なる部分が記録されます。ウェブ解析はウェブサイト上で起きたことを示し、CRMデータはその後リードやアカウントに何が起きたかを示します。検索ツールやキャンペーンツールでは、需要や集客の変化がわかります。AI引用モニタリングでは、たとえば製品ページがChatGPTやPerplexityの回答に登場しているかどうかがわかります。ただし、それだけでは、その登場がウェブサイトへの訪問やコンバージョンにつながったかどうかはわかりません。ウェブ解析は、識別可能な訪問とコンバージョンについて、それとは別にサイト内の視点を提供します。そのうえで、BIやデータウェアハウスを使えば、これらのシグナルのいくつかを共通の定義のもとに統合できます。
Future of Web Analyticsレポートでは、回答者の49%が、複数のシステムを組み合わせたハイブリッドなアプローチがウェブ解析の未来を形づくると予想しています。また、38%がBIツールと接続された基盤となるデータレイヤーをその未来の一部と捉えており、41%が既存ツールとの連携を購入時の判断要素に挙げています。
AI経由の訪問をパイプラインや売上と結びつけるには、解析データをCRM、BI、その他のビジネスデータと組み合わせて使える仕組みが必要です。アナリストには、1つのダッシュボードに縛られずにデータを取得できる手段も必要です。
APIや構造化されたエクスポートは、こうした作業のための確立された手段です。AIが分析そのものの一部になりつつある今、MCPのようなプロトコルは、対応するAIアプリケーションが解析の文脈を取得するための新たな選択肢となります。たとえばMatomoのMCP Serverを使えば、ChatGPT、Claude、Codexなどの認可されたツールをMatomoのデータに接続できます。AIアプリケーションが他のシステムにも接続されていれば、チームがあらかじめすべてを手作業でまとめなくても、その文脈とあわせてMatomoのデータを活用できます。
解析環境で確認すべきポイント
AIのアトリビューションに向けて解析環境を評価する際は、次の点に対応できるかどうかを確認しましょう。
| 確認すべきこと | 重要な理由 |
|---|---|
| 認識されたAIアシスタントから参照された人間の訪問を識別し、そのコンバージョンを個別に分析できるか? | AI経由の訪問を他の流入元と比較し、そうした訪問者がウェブサイトに到達した後にどのように行動し、コンバージョンするかを把握できます。 |
| 利用可能なシグナルが許す範囲で、自動化されたAIエージェントやAIチャットボットのアクティビティを人間の行動と区別できるか? | 自動化されたアクティビティは、トラフィックやエンゲージメントの数値に影響することがあります。これらを分けておくことで、人間の行動を解釈しやすくなり、AI向けの最適化も可能になります。 |
| アナリストがAPIや構造化されたエクスポートを通じてデータを取得できるか? | APIや構造化されたエクスポートを使えば、解析データをCRM、BI、その他のデータセットと組み合わせ、ダッシュボードの枠を超えてパフォーマンスを分析できます。 |
| ECチームが、自動化されたAIのアクティビティを切り分けたうえで、サイト内のコンバージョンファネル全体にわたってAI経由の訪問者と他の人間の訪問者を比較できるか? | 自動化されたリクエストによってコンバージョン率や離脱分析がゆがめられることなく、AIツールから訪れた人が商品、カート、チェックアウトの各ステップで異なる行動をとるかどうかがわかります。 |
| 解析データをCRM、BI、データウェアハウス、レポーティングのワークフローに取り込めるか? | サイト内での行動をリード、パイプライン、売上、その他のビジネス成果と結びつけられれば、コンバージョンデータの有用性が高まります。 |
| 認可されたAIツールが、明確なアクセス制御のもとで解析データを扱えるか? | AIを活用した分析を、元となる解析データに設定されたアクセス範囲内にとどめることができます。 |
| チームが元データの品質を評価できるか?また、そのデータはサンプリングされておらず、監査可能か? | AIツールは受け取ったデータをもとに動作します。チームはその制約を理解し、数値がどのように収集・レポートされたかを追跡できる必要があります。 |
| 流入元がどのように分類され、アトリビューションのロジックがどのように適用されているかをチームが追跡できるか? | あるチャネルのコンバージョンが急に増減したとき、アナリストはその変化が訪問者の行動、流入元の分類、レポートのロジックのどれに起因するのかを理解する必要があります。 |
これらの確認項目から、チームがAI経由の訪問を追跡し、それがどのように分類されたかを理解し、その後のビジネス成果と結びつけられるかどうかがわかります。
計測可能な部分でMatomoができること
Matomoは、AIアシスタントから参照された人間の訪問と、自動化されたAIのアクティビティを区別するため、チームはそれぞれを適切な観点で分析できます。AIアシスタントの集客チャネルは、リファラー情報が取得できる場合に、認識されたAIアシスタントからの人間の訪問を識別します。これらの訪問は他の集客チャネルと比較でき、ランディングページ、行動、目標のコンバージョン、その他のサイト内での成果にわたって分析できます。
人間による参照ではないアクティビティは、専用のAIレポートで扱います。AI Agent Overview(AIエージェント概要)では、認識されたエージェントの訪問を人間のトラフィックと比較できます。また、AI Chatbots(AIチャットボット)レポートでは、対応するチャットボットがサーバーサイドトラッキングを通じてウェブサイトのコンテンツをどのように取得しているかがわかります。さらにContent Requests(コンテンツリクエスト)レポートでは、チャットボットがどのページやドキュメントをリクエストしているかを確認でき、好んで取得しているコンテンツや取得に失敗しているコンテンツも把握できます。AIチャットボットのリクエスト自体は訪問とは別に処理されるため、訪問データやアトリビューションデータが生成されることはありません。
チームは、AIを活用したワークフローでMatomoのデータを扱うこともできます。Matomo MCP Serverは、ChatGPT、Claude、Codexなどの認可されたツールに、Matomoの解析データへの構造化されたアクセスを提供するため、アナリストは自然言語でデータを照会できます。AIアプリケーションが他のシステムにも接続されていれば、その文脈とあわせてMatomoのデータを活用できます。
2026年10月後半に提供予定のAsk Matomoでは、こうした自然言語による分析をMatomo自体に取り込みます。ログインしたユーザーは、既存の権限の範囲内で、対応するレポート、解析データ、設定について質問できるようになります。
手元にある根拠をもとにAIのアトリビューションを組み立てる
AIは訪問者がウェブサイトに到達する前の調査に影響を与えることがありますが、それでもアトリビューションは実際に記録された接点に従う必要があります。
認識されたAIからの参照が記録されていれば、その訪問を分析し、その接点をアトリビューションに含めることができます。オーガニック検索から訪れ、計測可能なAIとの接点がない場合は、その訪問はオーガニック検索のままにしておきましょう。顧客アンケートやAI引用モニタリングは、それ以前の認知について文脈を補うことができ、CRMデータは記録された訪問やコンバージョンをその後の成果と結びつけられます。しかし、これらのソースのいずれも、記録されていないAIとのやり取りを計測された接点に変えることはできません。
アトリビューションには直接計測されたやり取りを使い、有用な文脈を加えられる場合に他のデータを取り入れましょう。結びつきが記録ではなく推測に基づく場合は、そのことを明示しましょう。
AI、信頼、つながった解析に関するより広範な調査結果は、The Future of Web Analyticsでご覧いただけます。
MatomoがAIトラフィックを実際にどう扱うかをご覧ください
AIからの参照、AIエージェント、AIチャットボットを区別し、解析データをチームが使っている幅広いワークフローに接続しましょう。